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委員長は不真面目?!

「いくぜぇ!ゴッドサンダークラーッシュ!!!」
「う・・・うわぁぁぁぁ・・・や・・・やられたぁっ・・・」
日向仁と今村あきらの声が、5年3組の教室に響き渡る。
彼らと、ヨッパーこと小川よしあきを加えた3人は、手にモップやら箒を持って振り回している。
今は、掃除の時間である。
「ちょっと、仁、あきら、ヨッパー!真面目にやんなさいよ!」
「そうよ、そうよ!埃が舞って余計汚くなるじゃないの!」
マリアとれいこが彼らに文句を言うが、盛り上がった彼らがおフザケを簡単に止めるわけもなかった。
「ガミガミうるせえんだよ、マリア!」
「なんですってえー!」
「ほっとけよ、俺らはちゃあんと掃除してるじゃん」
あきらはそう言うと、モップの柄をズボンとベルトの間に差し込み、その場でぐるぐると回転を始める。
「どうだい、クールな全自動掃除機だぜ!」
あきらの周りで盛大に埃が舞い上がる。
あきらはそのまま回転しながら教室内を駆け巡る。

「うっひょぉー、それ面白れーな、あきら!」
「おれもやろーっと」
仁とヨッパーも真似を始めた。そのまま四方を走り回る。
「あ〜もう、止めてくれよ!」
机を運ぼうとしていた飛鳥がのけぞる。
「…どう見ても『全自動掃除機』じゃあありませんね」
教卓の影に退いて、仁たちを避けた勉が言う。
「こらー!やめなさあーい!」
とうとうマリアが怒った。仁を捕まえようと追いかけるが、ばさばさと跳ねる箒に阻まれて手出しが出来ない。
「ちょっとおー誰か止めてよ〜」
れいこが周囲で眺めているクラスメイトたちに向って叫ぶが、皆避けるので精一杯のようだ。
悪ガキ3名は、いつもこうして妙な悪戯を発明し、そのたびにクラス内は大騒ぎになるのだ。
「ほんと、真面目にやってくんないと終わらないじゃない」
「男子は本当に不真面目なんだから!」
「不真面目なんて、メイワクよ!」
「そうよ!不真面目はんたーい!」
周囲で見ていた面々、特に女子が口々に不平を言う。
但し、言うだけで、彼らを止めに出る気はないようだ。


不平を言うのはこの状況下では仕方ない。
しかし、ポテトが何の気なしに言った「メイワク」という単語が、いけなかった。
壁に耳あり障子に目あり。
3組教室の窓際、桟に溜まった埃がふわりと舞い上がり、風に乗って屋上へと運ばれる。
舞い上がった先には、五次元・ジャーク帝国によって主に陽昇町上空にばら撒かれたアークダーマがあった。
アークダーマはビリビリ、パチパチと小さな音を立てながらゆっくりと目を開ける。
「…メイワク…メイワク……。フマジメ、ハ…メイワク…」
アークダーマの呟きに呼応して、ぽっかりと黒い亜空間が出現する。
そこから、腰に沢山の箒を巻きつけた邪悪獣、フマジメンが生まれたのだった。
『…ヤッテラレッカ!』
フマジメンはそう鳴くと、箒の腰蓑を収縮させてびょーんとジャンプし校外へ飛び出して行った。


一方防衛組はそんなことを知る由もなく、悪ガキ3人組は教室内を走り回っている。
「…あたし、先生呼んでくる!」
そう言ってれいこが廊下へ出ると、丁度玄関掃除を終えたひろし達が歩いてきた。
「あ!ひろし君!大変よ、来て来て!」
れいこはほっとしたようにひろしを呼び寄せる。
「どうしたの?」
「また仁君達がふざけてるの!ひろし君止めてよ!」
「…はあ…またあいつらか…」
ひろしはそう呟くと、扉を開け、騒然とした教室内に入って行く。
そして、少し息を吸い込むと、大きな声で「お前ら、いい加減にしろよ!」と言った。
教室に響き渡ったひろしの声に、仁たちも、怒っていたマリアも、他のクラスメイトも一瞬静かになる。
「…げ。ひろし…」
小さい声でヨッパーが呟いた。
ひろしはつかつかと仁たちの方へ寄って行くと、立ち止まったままの仁の腰から箒を取り上げる。
彼はクラスの男子の中で大介に次いで背が高い。
そのせいもあるのだろうか、厳しい表情をしたひろしには迫力があった。
「…お前ら、そんなに3人だけで残って掃除したいのか?」
ひろしは3人の顔をじっと見つめ、低い声で聞く。
「い、いや…そんな…」
「…や、やだ…」
「じゃあ、真面目に掃除して、さっさと終わらせよう。掃除が終わったら、外で皆で遊べばいいじゃないか」
ひろしはそういうとにっこり笑う。
彼の有無を言わせぬ勢いに、仁たちは黙って頷くしかなかった。おとなしく箒とモップを外して、掃除に戻る。


その様子を見ながら、れいこがマリアに、
「ひろし君って、怒ると怖いのね…すごいわ」
と言う。
「怒ったわけじゃないと思うけど…。でもさすがだわ。ひろし君じゃないと男子は言うこと聞かないんだもの」
と、マリアがほっとした表情を見せた。
普段、地球防衛組で目立つのは、女子の学級委員長である白鳥マリアだ。
ひろしはどちらかと言うと、学級会の司会などを除けば、いつも彼女のサポート役に回っている。
しかし、ひろしはクラスのメンバー、特に男子をまとめるのが上手かった。
元気一杯の、というよりは常にエネルギーを持て余している悪ガキ3人組を最終的に黙らせることができるのはひろしだけなのだった。



「あ〜あ、掃除ん時のひろし、怖かったな」
無事に掃除を終え、校庭でひとしきりサッカーをしてパワーを発散させた後、水飲み場で休憩しながら仁が言った。
「ほんと。なんでか、あいつに言われると、言うこと聞かなきゃって気になるんだよなあ…」
と、あきら。
「でもさ、ひろしって学級委員の仕事のときだけ妙に怖いよな」
「ヨッパー、それってどういうこと?」
「おい吼児、お前そうは思わないのか?皆で遊んだりするときは、ひろしのやつ普通にノリいいじゃんか」
「そうそう、サッカーだって結構熱中してたしさ」
ひろしはさっきまで一緒にサッカーをしていたが、店番があると言って先に帰って行ったのだった。
「そう言われると…ひろし君には委員長の顔とそうじゃないときの顔があるように見えてくるね…」
と、吼児が呟く。
「あいつは、真面目すぎるんだよ」
と仁が言う。そして、蛇口から流れる水をごくごくと飲んで、
「学級委員長だからちゃんとしなきゃって気を張ってんじゃねえのか?」
と付け加えた。
「もっと肩の力抜けばいいのにさ…真面目すぎるって言うのにも、困りものだよな」
とあきらが手を洗いながら言う。
「そうだよ。真面目に委員長してなかったら、あいつだって俺らと一緒に騒ぐのにな」
ヨッパーはいつの間にかチョコレートを取り出して食べている。
そのチョコレートを一欠片奪い取った仁が、
「全くだ!真面目なんてつまんねえよ」と言う。



その頃、陽昇町内では邪悪獣フマジメンが暴れていた。
このフマジメン、箒の腰蓑を着けている以外は小学生男子のような外見をしている。
…ただし、顔はアークダーマそのものであるが。
『…ヤッテラレッカ!』
フマジメンはそう鳴くと、通りかかった人の前でくるくると回り出す。
この通行人はサラリーマンで、営業のため陽昇町に出張へ来ているところである。
「わっ、い、いきなり何するんだ!」
フマジメンが回ると、箒から噴煙が立ち上り、通行人はこの噴煙に包まれてしまった。
『…ヤッテラレッカ!』
回転を止め、フマジメンが飛び去った。
通行人の眼はとろんとしている。そして、顔を上げると、
「得意先回りなんてメンドクサイ!こんなこと真面目にやってられるか!よぉーし昼からビール飲んでやる!」
と大声で叫び、鞄を放り出して飲み屋街の方へ走って行ってしまった。


通行人が放り出した鞄の掛金穴から、にゅうと飛び出したパイナップル頭。
タイダーその人である。
「ほおーん。今度の邪悪獣は地球人に仕事を辞めさせるんダーか?待つんダー、フマジメン!」
タイダーは急いでフマジメンを追いかけて行った。

フマジメンが次にやって来たのは商店街。ふらふらしながらとある店に入って行く。
「いらっしゃいませ!…な、なんだ…?」
爽やかな声で客を迎えた少年は、フマジメンの姿に驚く。
『ヤッテラレッカ!』
「えっ…?! …こいつ…、もしかして…邪悪獣なんじゃ…?」
少年が呟いたその刹那、フマジメンは
『ヤッテラレッカー!』
と叫んで噴煙をあげる。
「う、うわぁー…!…ゴホン、ゴホン…」
フマジメンが店を飛び出すと、噴煙を浴びた少年、高森ひろしは虚ろな目をして呟いた。
「…店番なんか、真面目にやってられないよ…」
そう、ここは高森ラジオだったのだ。



邪悪獣フマジメンによって、陽昇町には不真面目な人間が大発生していた。
大人はみな自分の仕事を放棄して遊びに行ったり、居眠りしたり、家に帰ってしまったり。
当然、店も役所も銀行も、店員が真面目に働かないので、文句を言う客によって非難轟々だ。
バスも電車も時間通りに運行しないため、大混乱になった。
「その調子ダー、フマジメン!もっとやるダー!」
ビルの屋上でタイダーが騒いでいると、屋上のフェンス、金網のひとつが亜空間と繋がり、タイダーの上官であるベルゼブが姿を現した。
このベルゼブ、冷酷な眼差しを持つハンサムな男であるが、如何せん変な所から登場するという悪癖を持っているのだ。

ベルゼブはすっかり全身を現すと、邪悪獣を見つめて、
「…ほほう。今度の邪悪獣、なかなかやるではないか。」
と言った。
「ベ、ベルゼブさま〜」
「ふん、しかしこの調子で地球全体を混乱させるには時間がかかる。我々も行くぞ!」
「は、はいですダー」
「…出でよジャークサタン!」
ベルゼブが胸元を開けると、そこはぽっかりと空いている。
その胸空間に住む女、ファルゼブが抱くクリスタルからジャークサタンが出現した。
ベルゼブとタイダーはジャークサタンのコックピットに転送される。
「邪悪獣、超次元融合!!!」
ジャークサタンに体を引き裂かれ、フマジメンの体とジャークサタンは融合し巨大化する。
腰蓑のようにぶら下がった箒の先から花火のような怪光線が飛び出し、周囲は大パニックになった。
『…ヤッテランネエエエ!』
フマジメンは野太い声でそう雄叫びをあげた。



警察からの連絡を受けて、放課後の5年3組の教室には生徒達が集まっていた。
但し、ひろしだけは連絡が取れない。現在、担任の篠田が捜索に当たってくれている。
「地球防衛組、出動!!!」
白鳥マリアがそう叫んで、彼女の星型のメダルを机の窪みにはめ込むと、瞬く間に教室が司令室への変形を始める。
3組の教室と隣の放送室が地下へ潜る。机と椅子はそれぞれの生徒を乗せたまま移動をする。
窓は巨大モニターへと、机はコンソールへ変わる。
そして日向仁、月城飛鳥、星山吼児はパイロットとして、剣王・鳳王・獣王へ乗り込むのだ。
「3人とも!邪悪獣は駅前で暴れているそうよ!急いで向かってちょうだい!」
「「「了解!」」」
各ロボットは射出口から一気に飛び出して行った。




「マリアさん、バクリュウオーも出動させましょう!」
勉がコンソールから顔を上げて言う。
「でもまだ、ひろし君が…」
勉が再びコンソールのモニターをチェックする。
「マリアさん!ひろし君のメダル反応が学校に到着しました!間もなくこちらへ来ます!」
「わかったわ!教室上昇!」
マリアの掛け声とともに教室が上昇する。
戸口の窓には、篠田先生とひろしの姿があった。
マリアが戸を開ける。
「ひろし君!どうしたの?遅かったじゃない!」
「……。」
「ひろし君?」
ひろしは虚ろな目をしたまま、返事をしないで突っ立っている。両手はズボンのポケットに突っこんだままだ。
「…高森の様子が、変なんだ。ロクに返事をしないし、さっきからずっとこんな調子で不真面目な態度ばかり取って。無理やり引っ張ってきたんだが…」
と、篠田がマリアに言う。
「ええ?ひろし君が…?」
「ほら、さっさと司令室へ入れ!」
「いやだよ。面倒臭い。」
ひろしはそっぽを向く。
普段とはあまりにもかけ離れているひろしの態度に篠田も戸惑っている。
「と、とりあえず急いで入って!ほら!」
マリアはひろしの腕を掴んで無理やり司令室へ引きこんだ。
「せ、先生、とりあえずありがとうございました!」
席に着こうともしないひろしにマリアは戸惑いながらも、司令室を降下させた。

「ひろし君!早く席について、メダルを入れて!」
「……」
「おい!ひろし、どうしたんだよ?!」
あきらがそう呼びかけるが、ひろしは答えない。
不貞腐れたように立ったままのひろしに、防衛組の面々も戸惑いを隠せない。
それでも、むりやり彼を座らせ、強制的にメダルをはめ込ませる。
ひろしのコンソールが開き、計機が作動を始める。
「…あーあ。めんどくせー。」
ひろしは両手を頭の後ろで組んで、椅子を漕ぐ。
こんな彼の姿を、今まで誰も目にしたことが無かった。
「ひ、ひろし…?」ヨッパーも目を丸くする。
「どうしちゃったの…?」隣の席のゆうも心配そうに呟く。
「どうしたんですか?一体…」と、ひでのりも振り返る。
「……と、とにかく、バクリューオー発進よ!」

マリアがレバーを引き、校舎からバクリューオーが登場する。
いつもならば、校舎変形率をカウントするひろしが何もしないので、スムーズに発進準備が出来ない。
それでもなんとか、バクリューオーは発進した。

「マリア!こちら鳳王!駅前に邪悪獣発見!」
正面モニターに飛鳥から通信が入る。
鳳王は鳥型ロボットという特性を活かし、他のロボットよりも早く到着したのだ。
「メインモニターに回すぞ!」
飛鳥の声とともにメインモニターに邪悪獣フマジメンの姿が映し出される。
「…どうやら、もうジャークサタンと融合したようだな」
「飛鳥君、二人が到着するまで上空旋回を続けて!」
「了解!」
マリアの指令を受けて、鳳王はホバリングを続ける。
しかし、巨大化したスーパー邪悪獣フマジメンは鳳王の姿を認め、高速回転を始めた。
『ヤッテランネエー』
もうもうと上がる噴煙に鳳王はすっかり包まれてしまった。
「くそっ、視界が阻まれた…!」
「飛鳥君、一時退避よ!」
「……」
「飛鳥君?!」
「…」
「飛鳥君、応答して!」
「飛鳥くーん!」
マリアときららの呼び掛けに帰って来たのは、妙にトーンダウンした飛鳥の声だった。
「……あーあ、やってられないよ…」
「…?」
「何で僕がこんなことしなくちゃいけないんだ。・・・もう帰りたいよ」
「あ、飛鳥君?!」
指令室に大きく「ハテナ?」の文字が浮かび上がる。
「飛鳥君!」
「おい、飛鳥、なにやってんだよ!」
そこへようやく剣王と獣王が到着した。
「……ふあーあ」
到着したパイロット2人に返って来たのは、気の抜けた飛鳥の欠伸である。
「飛鳥君、どうしたの?」
「おい、合体するぞ、飛鳥!……飛鳥?」
なんと鳳王がくるりと転回し、邪悪獣から遠ざかって行くではないか。
「ま、待てよ飛鳥!」
「飛鳥君!」

「わかりました!!!」
ずっとコンソールのキーを叩いていた勉が声をあげる。
「な、何が、勉君?」
と、マリアが聞く。
「先ほど邪悪獣があげた噴煙には、人のやる気を無くし、無責任にさせる力があるようです!だから、飛鳥君の様子が変になってしまったのでしょう!」
「そ、そんなあ〜」
「飛鳥く〜ん」
「しっかりしてぇー」
「どうしよう、マリア?」
司令室内は騒然となった。
「みんな、落ち着いて! ど、どうしよう、勉君、ひろし君…」
マリアが視線を2人に這わせる。
「とにかく、無理やりにでも合体しないことには始まりません!」と、勉。
「……どうでもいいよ、そんなの…」
と言いながら、ひろしは欠伸をする。
「ひ…ひろし君!」
「おい、ひろし!何やってんだよ!」
「ひろしく〜ん」
皆の声も気にせず、ひろしはコンソールの上にうつぶせになり、居眠りを始めた。
「もしかして…」
「…ひろし君の様子がおかしいのも、邪悪獣のせいに違いありませんね…」
勉はずれた眼鏡を持ち上げながら言った。
「そ、そんなあ…。ひろし君に、飛鳥君まで…」


「おい、マリア!どうなってんだよ!」
「飛鳥君が帰っちゃうよお〜」
メインモニターから仁と吼児が呼びかける。
「と、とりあえず合体して!飛鳥君、とにかく言うこと聞いてちょうだい!」
「……何で僕が……。面倒臭いなあ」
「いいから!メダルを転送するのよ!それだけやってくれればいいから!」
マリアの剣幕に、飛鳥はしぶしぶメダルをブレスにはめこむ。
「ライジンオー、無敵合体!!」
勉のコンソールから仁のコックピットに転送されたコマンダーに、パイロット3人のメダルがはめ込まれ、3機はライジンオーに合体した。
「よーし、ライジンソード!…あれ?」
「仁君!武器の使用は待って下さい!」
「何でだよ、勉!」
「そ、それは…武器が出せないんです!」
「「ええ〜?」」
武器セイフティー管理のひろしが全く働いていないからであった。

「こうなったら……。マリアさん、バクリュウオーで邪悪獣を郊外へ誘い出してください!」
勉がそう進言する。
「わかったわ!仁、何とか逃げ回って!町から出たらゴッドライジンオーへ合体よ!」
「了解!…って、飛鳥、お前飛行担当だろ!操縦しろよ!」
「はあ〜?なんで僕が…」
「いいから!飛鳥君!」
吼児が強く言うと、ようやく飛鳥は従った。
「…わかったよ…。やりゃーいいんだろ、やりゃー。」


やる気の無い飛鳥を脅したり説得したりして、なんとかライジンオーと共にバクリュウオーが邪悪獣を郊外へと誘き出した。
飛行担当である飛鳥のやる気のなさのせいで、何度も噴煙を浴びそうになり、仁は避けるので精一杯だ。
「くっそぉ〜!飛鳥、正気に戻ってくれえー!」
一方、バクリュウオーの動きもいつもの精彩がない。
これもやはり、サブパイロットであるひろしのバックアップが全く無かったからである。

「ライジンオーのやつ、さっきから逃げてばかりですダー」
とタイダーが言う。
「ふははははは!ライジンオーめ、このスーパー邪悪獣、フマジメンに手こずっていると見える!」
「さっさと決着をつけてしまいましょうよ」
「そうだな。行け!フマジメン!」
『ヤッテランネエー!!!』
フマジメンの箒の先から出る火花と光線が、ライジンオーに当たって爆発する。
「うああああああ!」
「このー!バクリューカッター!!!」
バクリューカッターが箒を切り落とし、ようやく光線がおさまった。
しかし、フマジメンは再び高速回転を始める。
「いけない!マリアさん、合体して下さい!このままでは仁君達も不真面目光線にやられてしまいます!」
「わかったわ!仁、行くわよ!」
「おう!ライジンオー、超無敵合体!…あれ?」
仁がレバーを引くが、反応がない。


「あーーー!ひろし!」
そう、ゴッドライジンオーへの合体はひろしもレバーを引く必要があるのだ。
「ひろし君!レバー!合体プログラム作動よ!」
「はあ〜あ。」
マリアの声を無視してひろしが大欠伸をする。
「ひろし!」
「ひろし君、早く!」
「…面倒臭いな〜」
「おい、ひろし!お願いだから、レバーを引いてくれ!」
「…なんだよ、仁…」
「おいひろし!お前学級委員長だろ!責任感ある男だったじゃないか!」
「そうだよ、元に、真面目なひろしに戻ってくれよ〜」
あきらとヨッパーも声を出す。
「なんで僕がこんなこと…」
「うえ〜ん。こんなのひろし君らしくないよぉ〜」
クッキーが泣き声をあげる。
「ひろし君、とにかく、レバーを引いてくれるだけでいいから!お願いよ!」
「…しょうがないなあ〜引くだけね、引くだけ…」
その日、仁は初めてひろしにタイミングを合わせる形で合体レバーを引いたのであった。

ゴッドライジンオーに合体した後も、飛鳥とひろしのやる気の無さで防衛組は苦戦を強いられた。
それでもなんとか、スーパー邪悪獣フマジメンをハイパーサンダークラッシュで倒すことに成功したのであった。


「…あれ?僕どうしてたんだ?」
「…?なんだ?頭がぼーっとしてるな…」
邪悪獣を倒したあと、二人がようやく正気に戻り、防衛組の面々がほっとしたのは言うまでもない。

「ひろし…。お前が普段、いかに責任感のある奴だったか、身に沁みてわかったよ…」
仁がしきりに首をかしげていたひろしに近寄って言う。
「…?何?仁、急に…」
「俺も。もう真面目がつまらないなんて思わないから。」と、ヨッパー。
「?なんのこと?」
「俺らが悪かったよ。だからもう、不真面目になるのはやめてくれ!この通り!」と、あきらが両手を合わせる。
ぽかんとしたままのひろしを前に、悪ガキ3人組は揃って頭を下げたのだった。


しかし、生まれ持った(?)悪ガキ気質というものはそう簡単に治らない。
翌日も彼らは悪ふざけをして、ひろしに注意されたのである。
…但し、3組の面々は以前よりもひろしの言うことを素直に聞くようになった…のかも、知れない。
<< END >>
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本編のような流れの話を考えるのが難しいです。
と、いうわけで、不真面目にも後半の大事な部分を端折ってしまいました(苦笑)。
いや、個人的には「ひろしが居ないと大変だ!」みたいな部分を描けば満足なので。
本編でもゆうちゃんのように、合体にひろし超必要!みたいに主張してほしかったなあ…。
ひろしって結構重要な仕事を兼任してるんですよね。
不真面目な飛鳥とひろしを想像するのが面白かったです。