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そらのしたで >>おさななじみ3

ウエダは美紀に向き直ると,面倒臭そうにポケットに手を突っ込んだ。


「…それで,何の話だよ」
「さっきの喧嘩のこと」
「…」
「何であんなことしたの」
「…」
「わざと喧嘩を吹っ掛けたんでしょ」
「吹っ掛けてねえよ」
「うそだ」
美紀の低い声に,ウエダは口を噤んだ。

「最近そんなことばっかりじゃない。何が気に入らないの?」
「…おれは思ったことを言ってるだけだ。だいたいお前のクラスのちっこい奴が…」
「あたしの友達を馬鹿にしないで!」
「…」
「なんで人をけなすようなこと言うの?前はそんなこと,絶対言わなかったじゃない」
「…」
「前はそんなんじゃなかった。たーくんはもっと優しかった。人のこと,絶対馬鹿になんてしなかった」
「…やめろ」
「たーくん」
「オレのこと,たーくんって呼ぶな!」
大きな声に,美紀はびくりと体を揺らす。

「6年にもなってガキくせえ奴だな。…いつまでも幼馴染ごっこなんてしてられるかよ」
「…ごっこ…?」
「金輪際,俺のことたーくんなんて呼ぶな。いつまでも昔みたいに馴れ馴れしくすんな!
…お前なんか知らねえ。関係ねえ」
「…それ,本気で言ってるの…?」
「ああ本気だともよ。そもそもオレはお前も,お前のクラスも気に入らねえんだ!
何が地球防衛組だよ。調子に乗りやがって」
「……」

「話はそれだけか?じゃあオレは帰るぜ」
「…わかったわ」
「…?」
美紀はき,とウエダをにらむ。

「…ウエダくん。これからはあたしたちは幼馴染じゃない。だからはっきり言わせてもらうわ」
「…なんだよ」
「ウエダくんのイライラを,あたしのクラスのみんなにぶつけないで。
 もし今度あたしの友達を馬鹿にしたら,許さないから。ぜったいぜったい,許さないから」
「…それだけか?」
「ええ」
美紀はきっとウエダを見据えてそう言った。
ウエダは再びち,と舌打ちした後,何も言わずに走り去った。



ぴゅう,と風が通り抜けた。
日射しも弱まり,若干冷たい。
美紀はしばらくそのまま立ちすくんでいた。



「美紀ちゃーん」
クッキーが駆け寄ってくる。
「お話,できた?」
顔を覗きこまれて,美紀はふ,と俯いた。
小刻みに肩が揺れる。
「…うん」
絞り出すような声を出した美紀の頬に,暖かいものが流れ落ちる。

「美紀ちゃん…」
クッキーはそっと袖をつかんだ。
美紀は声を殺して泣いていた。


「…ごめん,泣いちゃって」
「ううん」
えへ,と苦笑しながら,美紀はごめんね,を繰り返す。
「我慢しちゃ駄目だよ。余計辛くなるよ」
袖をぎゅ,と掴んだまま,クッキーは小さな声で言った。

「あたし,そばにいるからね」

そう言われて,美紀はたまらず嗚咽を漏らす。
「あたし,幼馴染じゃ…なくなっちゃった…」
「え…」
「もう…たーくんって…呼べなく…なっちゃった…」
嗚咽に混じりながら,美紀は声を絞り出す。
「美紀ちゃん…」
「辛いよ。いつまでも仲良くいられないのは…つらいよお…」


じわり,とクッキーの眼に涙が溜まる。
「美紀…ちゃん…」


何と声をかけていいのか,ちっとも判らなかった。
一緒に泣くことしか,クッキーにはできなかった。


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