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そらのしたで >>おさななじみ2

昇降口の脇から少し歩くと,花壇がある。
夏に生い茂った草木はしなりと頭を垂れていた。
秋が,来ているのだ。


花壇の縁にちょこんと腰かけた小さな影が二つ。
下校時刻を知らせる校内放送が鳴り響く中,昇降口はぱらぱらと子どもたちを吐き出していた。



「あ」
クッキーが小さく声をあげ,美紀は昇降口を見遣る。
1組の生徒らしい男子が,ちらほらと出てくるところだった。
その中でひときわ目立つ,背の高い男子がひとり。
ウエダだ。


「美紀ちゃん」
クッキーが振り向くと,美紀はぐ,と意を決したように立ち上がった。
そしてそのまま,まっすぐウエダを目指して歩いて行く。
クッキーはあわててその後を追った。




「たーくん」
そう呼ばれて,びく,と足を止めた。
声の主が,まっすぐ自分の顔を見上げている。


「タカシ〜どしたんだ」
「なに?たーくんってお前のこと?」
「こいつ誰だよ〜」
「ほら3組の…」
「へえ,こんなやつ居たっけ?」
周りに居た男子が,わいわいと騒ぐのを,ウエダがぴし,と腕を伸ばして黙らせた。


「…なんだよ」
「ちょっと話があるんだけど」
「お前なんかと話すことなんかねえよ」

低い声でウエダが言うと,群がった男子がそうだそうだ,と囃し立てた。



このひとたち,嫌い。
クッキーはきゅ,と両手を握りしめる。


「あんたになくても,あたしにはあるの。ちょっと付き合って」
騒がしい男子を止めたのは,鋭い美紀の一言だった。
さすがのウエダもびっくりしたのか,目を丸くしている。


「…ち」
小さく舌打ちをすると,ウエダは「そーいうことらしいから,お前ら先に行けよ」と告げる。
興味津津,という表情をしながらも,男子たちは帰って行った。



「…で,お前は何だよ」
男子の一団が去ると,ウエダがじろりとクッキーを見下ろした。
ぶる,と小さな体が震える。

「クッキー」
美紀が優しい声を出した。
「あたし大丈夫だから。先に帰ってて」
そう言われても,クッキーは素直に頷けない。
「クッキー」
なおもそう言われて,
「じゃあ,あたしあっちで待ってるから。」
そう言い,クッキーは美紀の眼をじっと見つめた後,花壇の先へ向かって行った。


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