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そらのしたで >>きみのかたち3

「ひゅーひゅー」
「あついあつい,ここだけまだ真夏みたいだぜ」

飽きもせずにからかいながら,教室を出て行くひろしとクッキーを見送った後,あきらがヨッパーに声をかけた。

「なんかひろし,様子が変だったよな」
「そうかあ。どこらへんが?」
「なんつーか,最近からかってもろくに反応しねえし…」
「お前らがからかうからだろ」

あきらが振り返ると,ランドセルを背負った飛鳥があきれたような眼差しを向けている。
「俺らのせいなのかよ!」
「いい加減子どもっぽいことは止めにしたら」
「へん!俺らはまだ子どもなんだから,いいじゃねえかよ」
「あ,開き直った」
「なあなあ,それより俺ハラへっちゃったよ〜」
「そういわれると,俺もそうかも」
「飛鳥〜なんか奢って」
「馬鹿言うなよ。何で僕が」
「お前んちでおやつ〜とか御馳走になっちゃったりしてぇ〜」

「強引なこと言ってんじゃないの!飛鳥君はあたしたちと帰るんだから」
揉み手をしながらにやにやと笑ったヨッパーの頭を,ごいん,と叩いてきららが冷たく言い放つ。

「いってえ〜」
「き,きらら…」

きららの背後には女子一同がずらり。
「んだよ,強引なのはそっちじゃねえか」

あきらは反論する。勿論,小さな声で。




マリアが応援団の打ち合わせを終えて教室へ戻ってくると,パソコンのキーを叩く勉の姿があった。

「勉君,まだ残ってたの」
「はい,れいこさんの練習日誌をつけていましたので」
「そうだったの。で,どう?れいこの調子は」
「れいこさん,今日は3段目の成功率が60%に上昇しました。この調子なら本番までに成功するかと」
「れいこ,頑張ってるのね。すごいじゃない」

「お〜勉,何やってんだ?」
遅れて教室へはいって来た仁へ,マリアが説明する。
「さっすが,れいこだぜ。」
鼻の下をこすりながら,仁は嬉しそうにそう言った。

「そうそう,こんなデータをまとめているんです」
カタカタ,と素早くキーを打ちながら,勉が2人に話しかける。
「なに?」
「これです!」

勉が打ち出した表が,モニターに映し出された。
「…?」
「これは…?」
「我が3組チームのバッヂデザインの人気を,表にしてみました」
「へえーすっげ!」「いつのまに…」

「皆さん気にしてらっしゃいましたからね。3年生の分のデータを入力してませんので,まだ完全ではありませんが」
「もちろんオレが一番だよな,な,勉!」
「それは…」
「それは?」と,マリア。

「明日発表します!明日のホームルームまでには,結果をまとめられるでしょうから」
仁とマリアはそろってずこ,と体勢を崩した。



翌日,勉は宣言通り,朝のホームルームでバッヂデザインの人気を発表した。

一位,飛鳥。
「とーぜんだね」
飛鳥のメダル形を選んだのは,ほとんど女子であるらしい。

二位,マリア。
「うそーっ」
男女半々の得票数(?)とのこと。星型であることも理由の一つであるらしい。

三位,吼児。
「ほえーっ」
こちらは中学年男子の人気が高かった。獣王人気が理由らしい。

四位,仁。
「どへーっ」
単純で作りやすい丸型がなんだか物足りない,という理由があったらしい。
「…なんでだよぉ!!!」
ちなみに低学年男子の人気が高かった。

五位はクッキー。
「えへっ」
低学年女子には,ハート型が大人気であった。

その後は,似たり寄ったりの数であった。適度にバラけているらしい。
ちなみに,この結果は某CDドラマの影響を受けている…かもしれない。

「な〜んだ,やっぱりこうなるのかよ」
ホームルームを終えた後,勉の打ち出した表をみながらあきらが呟いた。
「まあまあ,しょうがないわよ。」
鷹揚にポテトが応える。
「やっぱり飛鳥君はダントツだったわねえ〜」
嬉しそうなきららをそっと見ながら,
(でもそれって,ライバルが多いってことじゃないのかな…)
と大介は思ったが,声には出さずに置いた。

「あれ,これって面白い」
表を見ていたれいこが呟く。
「どうしたんですか,れいこさん」
ひでのりが聞くと,れいこは指をさしながら,
「ほら,みんな数は似たり寄ったりだけど,どの学年の数が多いのかはバラバラでしょ」
「そうですね」
と,勉が眼鏡を持ち上げる。
「見て,ひろしくんのとこ」
と,ポテトが示す部分を見た吼児が,うわあ,と声を出した。
「なになに?」
「すごい,ひろしくんって5年女子の数がほとんどだったんだねえ」
吼児が感心したように言うと,
「へえ,結構人気有るんだな,委員長」
あきらは黒板を消しているひろしの後ろ姿を眺めた。
「クッキー,いいのいいの?」
きららはにやりと笑いながら,クッキーを小突いた。
むう,と眉間にしわを寄せたクッキーが,「知らないもん!」と言って教室から出て行く。
「きららったら,またあ」
マリアに怒られて,きららはちろりと舌を出した。


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