「…じゃあ本来の議題についても話し合いましょう。いいわよね,ひろしくん」
「ああ,そうだね。」
マリアは一旦席に戻ると,引き出しからプリントを出し,仁を促す。
入れ替わりにひろしは着席し,マリアと仁は教壇の前に立った。
「さて,ここからは応援についての話し合いをします。
このあいだの学級会でみんなから出してもらったアイデアを,応援団会議で話し合った結果,
お揃いのバッヂを作ることに決まりました。
バッヂのデザインなんだけど,下級生の皆からリクエストがたくさん集まったの。
それがね…」
マリアが言葉を継ぐ前に,
「な,な,なんと!俺達地球防衛組のメダルの形にしたいって意見がたくさん来たんだぜ!」
嬉しくてたまらない様子で,仁が発表する。
「すっげ〜俺達のメダルのデザインか〜」
「それは考え付かなかったな」
「何だか嬉しいわね」
「ほんとね〜」
仁の発表を受けて,子どもたちはワイワイと盛り上がる。
単純に,後輩達から慕われているということが嬉しい。
そして,地球防衛組という,自分たちの特徴を応援に使えることが,子どもたちの自尊心を刺激した。
「それでね,明後日の特別授業は,それぞれ分担して下級生のクラスでバッヂ作りをします。
それまでに,みんな自分のメダル型のバッヂを作って来て欲しいの。
見本に使いたいから,各自5つずつ作ってください。
材料は画用紙か厚紙で大丈夫だから。たいへんだろうけど,お願いね」
マリアの呼びかけに対して,皆拳を突き出しておう!と応える。
結束力なら他のどのクラスにだって負けないのが,6年3組なのだ。
皆の声に合わせたかのように,授業時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
マリアは自分の席へと戻りながら,れいこの顔をちらりと見る。
れいこはすっかり元気を取り戻しているようで,マリアはほっとした。
れいこが本来の強さを取り戻してくれて,良かった。
そしてそれは,このクラスの,仲間を想う気持ちのお陰だ。
このクラスになって1年半が過ぎようとしている。
ひとりひとり,だけじゃなくて,クラスとしても成長してる。
マリアはそう思えて嬉しかった。
そしてできれば,クラスという枠を超えてまとまっていけたらいいのだけれど…。
5年の頃,ジャーク帝国との闘いが激化した中,2組の谷口をはじめ,陽昇学園の面々は自分たちに協力してくれた。
あのとき感じた,みんなで地球を守るという気持ちは,嘘じゃない。
でも,結局あれは,闘いの中だからこそ生じたつながりだったのだろうか…。
そうじゃない,はず。
マリアはそう信じたかった。
しかし,さきほど自分を突き飛ばしたウエダの顔が,マリアを否定するように頭の中でぐるぐると廻っていた。
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