「…と,いうわけなんだ」
教卓に立った仁が,谷口の話を説明した。
正直,ここまで大きな話になるなんて思っていなかった。
応援団長として,皆の意見を聞いてから答えを出したい。
これは,仁とマリアの両方に共通する思いだった。
仁の話が終わると,防衛組の面々はざわざわと話しだす。
それを手で制して,マリアが「それで,皆の意見を聞きたいの。どう思う?」と続けた。
「僕はいいと思うんだ」
飛鳥がさっと立ち上がり,皆をぐるりと見回しながらそう言う。
「他のクラスの下級生たちが,参加したいって言ってるんだったらそうしてあげたいし。
僕らだけが楽しいって言うのは,何だか違うような気がして来たんだ。」
「さっすが,飛鳥君。優しい〜」
ポテトがうっとりとした表情でそう言うと,れいこも
「飛鳥君の考えかたって大人だわ」
と呟く。
「飛鳥君の意見に賛成よ。実は放送部の後輩からも,お願いされてたのよね」
と,きららも発言する。
「あたしのとこの下級生も,そんなこと言ってたわ」
美紀もきららに同調した。
「さんせ〜い」
「はい,あたしも賛成」
こうして女子の大半は飛鳥の意見に賛成した。
これは防衛組にとっていつもの光景では,ある。
「他のみんなはどう思う?」
マリアはじゅんに男子の顔を見ながら訊ねた。
「おれはちょっとつまんねえと思うけど…」
ポツリとそう言ったヨッパーに,「ちょっとヨッパー」と,小さくクッキーが声をかける。
「いいのよ。ヨッパーの意見もきかせて頂戴」
マリアが促すと,少し面倒臭そうに立ち上がって,ヨッパーが話し出す。
「だってさ,応援グッズってもともとおれらのチームのユニフォームだったはずだろ。
他のクラスも参加するんだったら,意味なくならないか?」
「それだったら,色を分けてもらえばいいんじゃないかな」
吼児がヨッパーに向ってそう言う。
「ほら,僕らのチームはハチマキの色に合わせて赤色だったろ。だったら,2組は白にすれば,チームカラーで分かるんじゃない?」
吼児に言われ,ヨッパはそうだけど…と口籠った。
「俺は賛成するよ」
「あきら,どうぞ」
ハイ,と珍しく手を上げてそう言ったあきらに,仁は促す。
「飛鳥も言ってたけど,俺らのチームだけで独り占めするのは,なんだか勿体ない様な気がして来たんだよな。
それにさ,なんだってメダル型だぜ。下級生の奴らがそれを欲しいって言ってくれてるって,すっげえ嬉しくないか?」
「そう言われると,そうかもな…」
ヨッパーがあきらの方を向いて,そう応える。
「あきら君,あたしもそう思うわ」
ラブも立ち上がった。
「他のクラスのみんなが,あたしたちに向けてくれる気持ちに,応えたいなって思わない?
楽しいことは,みんなで一緒に味わった方が,もっと楽しくなると思うの。」
ラブの熱意のこもった発言に,皆はさらに盛り上がる。
「僕ら地球防衛組がこうして今でも活動できるのって,まわりのみんなのお陰だしね。
その感謝の意味も込めて,みんなにバッヂを付けてもらうのっていいと思う」
ひろしも手を上げてそう言った。
「それじゃあ,決をとります。2組チームが応援バッヂを使用することに賛成のひと」
マリアがそう言うと,はい,と一斉に手が上がった。
マリアが仁を見て,笑った。
仁もまた,鼻の下を擦りながら,にこっと笑った。
ふたりともおそらく,同じ気持ちだった。
<< prev next >>